期待のチカラ 2022年7月度座談会拝読御書「四条金吾殿御返事(世雄御書)」

創価学会では、毎月、全国各地で座談会という集いを開き、鎌倉時代の日蓮大聖人(1222年~1282年)が書き残された「御書」(論文や手紙など)を学び合います。機関誌の「大白蓮華」や「聖教新聞」には、その月に学ぶ「座談会拝読御書」を解説する記事が掲載されていますので、ここでは、信仰を持っていない方々にも理解しやすい視点から、青年部員が御書の内容を解説します。

こんにちは! 7月度担当のレンタローです!

仕事でも何かの勉強でも、ふと「疲れたなぁ…」って立ち止まることってありますよね? それが大きい壁の場合、あきらめようかと悩んだりすることもあります。

そういう踏ん張りどころで、自分を支えてくれるのは何でしょうか?その一つの姿を、今回の拝読御書「四条金吾殿御返事(世雄御書)」から学んでみたいと思います。

拝読御書について

「四条金吾殿御返事(世雄御書)」は、1277年(建治3年)7月または8月、日蓮大聖人が56歳の時に身延(山梨県)で記され、鎌倉にいた門下の四条金吾に送られました。

四条金吾は鎌倉で暮らしていた武士であり、大聖人の弟子の中心的人物です。武芸だけでなく医術にも優れ、主君の江間氏からあつい信頼を受けていました。

しかし、金吾が江間氏に大聖人の仏法を説くようになると、次第に疎まれるようになります。さらに、金吾の同僚たちは、事実無根のデマを主君に吹き込み、それを信じた主君は「領地替え」を金吾に命じます。さらに「法華経の信仰を捨てる誓約書を書け! さもないと所領を没収する!」と命じたのです。

この事件についての金吾からの報告に対する返事が、今回の御書です。お手紙の冒頭で大聖人は、「仏法は勝負」であり、仏とは最も勝れた法を持つ、世の中で最も優れた「世雄」(注1)であると述べられます。

(注1)世雄
仏の尊称の一つで、世間において雄々しく一切の煩悩に打ち勝つ人を指す。

そして、世の統治においても仏法を用いた時代は栄え、背けば滅亡したという過去の歴史を振り返り、仏法を持ち続けることを忘れてはいけないと戒められます。また、金吾に、「信仰を捨てる誓約書など絶対に書いてはいけない」「信心を貫き通すことで、すべてに勝利できる」と語りかけられました。

こうしたアドバイスをされた上で、今回学ぶ一節につながります。

仏法者が目指すもの

本文

日蓮は少きより今生のいのりなし。ただ仏にならんとおもうばかりなり。

(御書新版1590ページ14行目、御書全集1169ページ8行目)

意味

日蓮は若い時から今生の栄えを祈ったことはない。ただ仏になろうと思い願うだけである。

日蓮大聖人は若い時から仏道を志し、修行と実践に生涯を捧げてこられました。それは、世間的な栄誉栄達のためではなく、仏の境涯に至る(成仏)ためのもの、と述べられています。

そもそも大乗仏教では、修行者(菩薩)は四つの誓願(四弘誓願、注2)を立てるとされます。その一つが仏の覚りを得ることを目指すというものですので、まさにそのことを言われていることになります。

(注2)四弘誓願
あらゆる菩薩が初めて発心した時に起こす4種の誓願。①衆生無辺誓願度(一切衆生をすべて覚りの彼岸に渡すと誓うこと)、②煩悩無量誓願断(一切の煩悩を断つと誓うこと)、③法門無尽誓願知(仏の教えをすべて学び知ると誓うこと)、④仏道無上誓願成(仏道において無上の覚りを成就すると誓うこと)。

「あなたのことは絶えず祈っている」

本文

されども、殿の御事をば、ひまなく法華経・釈迦仏・日天に申すなり。その故は、法華経の命を継ぐ人なればと思うなり。

(御書新版1590ページ14行目~、御書全集1169ページ8行目~)

意味

しかし、あなた(四条金吾)のことは、絶えず法華経、釈迦仏、日天子に祈っているのである。それは、あなたが法華経の命を継ぐ人だと思うからである。

自らは仏になろうという願いをもち、自身の栄えはまったく祈っていないけれども、四条金吾のことは、ずっと法華経、釈尊、諸天善神に祈ってきたと述べられています。そして、その理由は、金吾が「法華経の命を継ぐ人」、つまり法華経の行者である大聖人の後継として生きていく弟子であると思っているから、と明らかにされています。

この言葉を受け取った金吾の心を察すると、胸に迫るものがありますよね。

大聖人の弟子として南無妙法蓮華経を唱え、弘めていく中で、主君からの圧迫が起こりました。同僚も事実無根のデマを主君に吹き込むわけですから、まさに万事休す。そんな中で、大聖人から、「あなたのことは絶えず祈っている。それは、あなたが『法華経の命を継ぐ人』だと思っているからですよ」との言葉が届く――。一本気な性格の金吾は、どれほど心を揺さぶられたでしょうか。

また、『法華経』は、すべての人々が仏になれることを示した経典であり、すべての人々を幸福にとの願いが書かれています。その願いはそのまま、大聖人の誓いでもあります。そして、その心を継ぐ弟子こそ、金吾であると断言されているのです。

このような大聖人の深い深い慈愛を胸に、金吾は信仰を根本として、主君のため誠実に働き続けました。そしてついに、主君からの信頼を取り戻し、新たな所領をもらうこともできたのです! 

金吾にとって、師匠の励ましが、逆境に負けない力になったんだと思います。池田先生は、「大聖人は、ひたすら弟子の成長と勝利を願われました。門下は、それぞれ逆境と戦い、宿命を乗り越え、見事な実証を示していきました。(中略)師匠の励ましを受けて、一人ひとりが大きく勝利のドラマを築いていった」(『勝利の経典「御書」に学ぶ』第6巻)と指摘されています。

さまざまな勝負どころで自分を支えてくれるものの一つが、周囲からの期待や励ましでしょう。自分のためだけにやっていれば心が折れそうなことも、ほかの人のため、親孝行や恩返しのためだと思えば、踏ん張る力が出るのではないでしょうか。

御書のページ数は、創価学会発行の『日蓮大聖人御書全集 新版』(御書新版)、『日蓮大聖人御書全集』(御書全集)のものです。

SOKAnetの会員サポートには、教学研鑽用に以下のコンテンツがあります(「活動別」→「教学」)。どなたでも登録せずに利用できますので、ぜひご活用ください。
・御書検索(御書新版・御書全集) ・教学用語検索
・Nichiren Buddhism Library ・教学入門 ・まんが日蓮大聖人
・仏教ものがたり(動画) ・教学クイズ ・座談会御書e講義

この記事のtag

#座談会拝読御書