可能性示す尊い存在 2026年3月度拝読御書「阿仏房御書(宝塔御書)」

創価学会では、毎月、全国各地で座談会という集いを開き、鎌倉時代の日蓮大聖人(1222年~1282年)が書き残された「御書」(論文や手紙など)を学び合います。機関誌の「大白蓮華」や「聖教新聞」には、その月に学ぶ「座談会拝読御書」を解説する記事が掲載されていますので、ここでは、信仰を持っていない方々にも理解しやすい視点から、青年部員が御書の内容を解説します。

卒業シーズンを迎える春3月。学生時代の私は、進級、進学など、新たなステージへの階段を上る期待で、心を躍らせていました。

時が経ち、社会人になって早11年。今の私は、〝来年度は、掲げた目標を達成できるだろうか〟〝何か新しいことに挑戦しなければ〟と、期待よりも不安や焦りを抱えながら3月を過ごすことが多くなりました。

心の持ちようは変わっても、当時と比べて確実に成長できたこと――それは、自ら唱題に挑戦していることです。

今回学ぶ「阿仏房御書」では、南無妙法蓮華経の題目を唱える全ての人が、人間として輝いていけることを教えられています。

唱題で生命を磨き、キラキラとした春を迎えられるよう、一緒に学んでいきましょう。

拝読御書について

阿仏房御書は、日蓮大聖人が佐渡の中心的な門下である阿仏房に送られたお手紙です。

阿仏房はもともと念仏の信者でしたが、佐渡流罪中の大聖人と出会い、その教えと人格に触れて、妻の千日尼と共に帰依しました。それからは、大聖人の生活を支え、大聖人が身延(現在の山梨県内)に入られた後も、何度も大聖人のもとを訪れています。

本抄の中で、阿仏房が大聖人に対して「法華経に説かれる多宝如来や宝塔の涌現とは、一体、何を表しているのか」と質問します。大聖人は、末法において法華経を持つ者の姿よりほかに宝塔はないと述べられた上で、阿仏房自身が宝塔であり、智慧や慈悲を生命に具えた仏であることを教えられます。

そして、その宝塔を顕したのが御本尊であることを明かされるのです。

最後に、阿仏房のことを「北国の導師」と呼び、使命の地で信心に励む姿をたたえられています。

「あなた自身が宝塔」

本文

末法に入って法華経を持つ男女のすがたより外には宝塔なきなり。もししからば、貴賤上下をえらばず、南無妙法蓮華経ととなうるものは、我が身宝塔にして我が身また多宝如来なり。妙法蓮華経より外に宝塔なきなり。法華経の題目、宝塔なり。宝塔また南無妙法蓮華経なり。

(御書新版1732㌻10行目~12行目・御書全集1304㌻6行目~8行目)

意味

末法に入って、法華経を持つ男女の姿よりほかには宝塔はない。もしそうであるならば、貴賤上下にかかわらず、南無妙法蓮華経と唱える人は、わが身がそのまま宝塔であり、わが身がまた多宝如来なのである。
妙法蓮華経よりほかに宝塔はないのである。法華経の題目は宝塔である。宝塔はまた南無妙法蓮華経である。

語句の説明

・「多宝如来」(たほうにょらい)
法華経見宝塔品第11で出現し、釈尊の説いた法華経が真実であることを保証した仏。過去世において、成仏して滅度した後、法華経が説かれる場所には、自らの全身を安置した宝塔が出現することを誓願した。

御文に出てくる「宝塔」とは、法華経見宝塔品第11において、釈尊が説法をしている中、突然大地から出現し、空中に浮かんだ塔のこと。金、銀、瑠璃など7つの宝で飾られていて、その大きさは地球の3分の1から半分にまで及ぶとされます。

この塔の中には、釈尊の説いた法華経が真実であることを証明する多宝如来が座っています。つまり宝塔は、法華経が真実だと示す時に現れるのです。

御文の中で大聖人は、〝末法で法華経を持つ人は、身分に関係なく、全ての人が宝塔であり、多宝如来である〟と仰せです。誰もが人間としての尊さを持っていることを教えてくださっていると拝されます。

〝自分が宝塔で、多宝如来……?〟と、すんなり納得できない方もいるかもしれません。しかし、〝あなたこそ、法華経の真実を、信心の素晴らしさを、身をもって示していくべき人なんだ〟との渾身の励ましから、自分自身が、人間として生きることの素晴らしさを示し広げていく尊い存在なんだという使命の大きさが伝わってくるのではないでしょうか。

さらに、宝塔とは、南無妙法蓮華経にほかならないと述べられます。つまり、御本尊を信じ、題目を唱えることで、自身に具わる仏の生命を開くことができるのです。

流罪中の大聖人に仕え、迫害にも負けず、純粋に信心を貫いた阿仏房。〝南無妙法蓮華経と唱えるあなた自身が宝塔であり、仏の生命が具わっている〟――この大聖人の確信の言葉に、どれほど勇気が湧いたことでしょう。

希望広げる生き方

3年前に信心を始めた、ある青年のエピソードを紹介します。

入会前の彼は、自己肯定感が低く、恋愛や家族との関係に悩んでいました。その姿を見た友達から、座談会の話を聞き、参加することに。地区の方々の体験談や、互いに励まし合う温かな姿に胸を打たれ、唱題にも挑戦。すると、〝理想の自分〟が浮かび上がってくるように感じたそうです。

〝題目をあげると、自分の可能性を開いていける!〟――この喜びをほかの人にも伝えたいと感じた彼は、友達への対話に挑戦し、3人が信心を始めました。また、彼が信心を通して生き生きと変わっていく姿を目の当たりにした家族との関係は改善し、さらに家族は仏法への理解を深め、学会活動を応援しています。

〝自分なんてどうせ……〟と自身を卑下し暗く沈んでいた日々から、この仏法に出あい、自身の可能性を信じられる日々に変わっていった様子がひしひしと伝わってきます。それまで見えていなかった〝本来の自分〟、〝理想の自分〟が現れたことは、彼の中に〝自分自身が宝塔なんだ!〟という自覚が芽生えたということなのではないでしょうか。人間が持つ可能性を周囲に示し、希望を広げる生き方と言えます。

池田先生はつづっています。

誰もが宝塔の輝きを持っている。全ての人が本来、尊極の存在なのだと心の底から実感する。「誰もが等しく尊い存在」――この大いなる真実に気づくことこそが法華経の真髄です。(中略)皆が、一人の人間として平等に尊い存在であることを教えている仏法こそ、人間尊敬の究極の思想なのです。(『未来の希望「正義の走者」に贈る』)

何か特別な存在になるのではなく、ありのままの姿で祈り、自身の内にある仏の生命を開き、輝かせていく。どこまでも自分らしく、〝不安と焦りの3月〟から〝心の宝を開く3月〟へと転換していきたいと思います。

御書のページ数は、創価学会発行の『日蓮大聖人御書全集 新版』(御書新版)、『日蓮大聖人御書全集』(御書全集)のものです。

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