孤立問題を考えるーー「共助」の視点から

孤立問題を考えるーー「共助」の視点から

<社会的孤立の初の実態調査>

「孤独感があるのは30代が最多」(時事通信)――きのう(4月8日)、政府が「社会的孤立」について、公表した初の実態調査の結果である。高齢者の問題と思われがちな孤立化は、若者世代にとっても、大きな課題であることが浮き彫りとなった。
「社会的孤立」という言葉に明確な定義はないが、一般的に家族や社会との関係が希薄で他者との接触がほとんどない状態のことを指す。

「社会的孤立」が起こる要因の一つは、単身世帯の増加にある。国立社会保障・人口問題研究所は、2040年に単身世帯が全世帯の4割になると予測している。「単独世帯の増加は、頼りにできる存在が身近におらず、社会的に孤立してしまう人の増加にもつながる」(平成30年版『情報通信白書』)と懸念されて久しい。

<求められる「共助」>

「自助」のみの解決が難しい「孤立」には、国や自治体などからの「公助」による支援が必要である。政府も、2021年2月に孤独・孤立対策担当大臣を新設し、本格的に、この問題に着手し始めている。
とはいえ、孤立を防ぐためには、日常的な人と人との関わりが欠かせない。その機会を増やすために「公助」だけでは限界がある。

今、求められているのは、地域やコミュニティーで支え合い・助け合える「共助」である。

「共助」を育むために必要なことは何か。ただでさえ、昔と比べて隣近所との付き合いは少ない。追い打ちを掛けるように、コロナ禍で人との直接的な交流の機会を減少した。公衆衛生の専門家で東京医科歯科大学の藤原武男教授は、こうした社会背景を踏まえ、孤立を防ぐためには“声を掛ける人の存在”が重要と指摘する。具体的には「おはようございます」「こんにちは」といった、日常的なあいさつや、「最近、どうですか」「何かあったら言ってね」といった、ちょっとした声掛けや雑談が大事であるという。

藤原教授は、こうした「小さな行動」の積み重ねが、孤立を防ぐ「大きな力」になると強調した上で、「地域に根を張る創価学会の皆さんの役割は、社会的にますます重要」と示唆している(「聖教新聞」2021年2月28日付)。

<創価学会員の特徴>

一側面から見れば、創価学会員の特徴は「自ら声を掛ける人」といえる。「困っている」と聞けば、すぐさま、飛んで行く。何もなくても「顔を見に来たよ」と足を運ぶ。こうした行動は、御書の「人のために火をともせば、我がまえあきらかなるがごとし」(新2156・全1598)との一節を胸に刻み、友に尽くす信仰の発露である。

筆者も単身で下宿していた学生時代、外界との連絡を遮断して引きこもっていた経験がある。それでも、地域の壮年・婦人の学会員が、いつも変わらず、声を掛け続けてくれた。「体調は大丈夫?」「ちゃんとご飯を食べている?」と心配し、手作りの料理を届けてくれたこともあった。また同世代の仲間の存在も大きかった。自分の悩みに寄り添い、一緒に涙しながら向き合ってくれた先輩がいた。今も思い返すと胸が熱くなる。こうした出会いの中で、自身もまた「人のため」「地域のため」に生きていきたいと思えるようになった。

社会活動家の湯浅誠氏は、長引くコロナ禍にあって「創価学会のように、地域に根を張ったコミュニティーは、ますます存在意義を増す」と述べている(「聖教新聞」2020年8月22日付)。

私たちの日々の学会活動の価値はいやまして高まっている。「共助」といっても、難しいことではなく、ちょっとしたあいさつ・声掛けから始まることを、改めて強調したい。たとえ一言であっても、救われる人は必ずいる。私たち青年部は「小さな行動」を地道に積み重ね、心を通わせる「共助」の輪を一層、広げていきたい。

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