手記:希望に生きる~能登半島地震と向き合って~

2024年1月1日夕刻。その「時」は突然襲ってきました。

石川県能登半島を中心に襲った大地震。マグニチュード7.6、最大震度7を観測しました。

県内の死者数は245人、行方不明者3人、負傷者1,191人。家屋の倒壊は全壊8,217棟、半壊15,661棟にのぼります。(内閣府「防災情報のページ」令和6年4月23日14:00現在)。
今もなお被災地の復旧作業は続けられ、避難所生活を余儀なくされている方々が数多くいらっしゃいます。

地震があった日、私は金沢市内にある創価学会の石川文化会館にいました。毎年の元日に行われる新年勤行会を終えて一段落したところでした。一瞬、建物が倒壊することも覚悟しましたが、大きな被害はありませんでした。

震災発生以来、会館で創価学会員の安否確認、被災状況の把握のために動きました。さらに、創価学会本部からの救援物資も続々と届き、被災地に送る手配にも奔走しました。

被災地の声

「地球が爆発するかと思うくらいの揺れに感じた」

「恐怖で発狂してしまった」

「地面が波打っていた」

被災地を回る中で、地震の恐怖と被害の大きさを物語る生々しい声に多く触れました。

能登半島では、地域の創価学会のリーダーたちが被災者のもとを訪れ、激励に回っています。しかし、そのリーダー自身も被災者なのです。自らの状況と向き合いながらも、懸命に仲間たちを励ますその姿に、深い感動を覚え、勇気が湧きました。

その中の一人には、輪島塗の蒔絵師として活躍する人もいます。その壮年の方は創価学会の組織で地域の責任者も務めています。工房兼自宅も被害を受け、作業は一時中断していました。しかし、そんな中でも決して希望は捨てませんでした。

その壮年を含め、被災地の創価学会員が口々に語っていた日蓮大聖人の御書の一節があります。「大悪おこれば大善きたる」(御書新版2145ページ・御書全集1300ページ)
――大きな苦難は、良い出来事が起きる瑞相、前触れとの意味です。
先の壮年の方は、こう語っていました。

「深い祈りと行動があってはじめて、大悪は大善に変えることができるんだと思います。震災という大きな苦難を前に辛さがありますが、ピンチをチャンスに変えることができると信じています」

銭湯を経営する創価学会の男子部員は、建物の倒壊など甚大な被害を受けました。

しかし、がれきの下から源泉が湧いているのを見つけ、その“一筋の希望”に全てをかけて銭湯の再建を決意。

倒壊を免れた別棟の湯船まで源泉をひき、2月から被災者向けの浴場として再開しました。

いかなる状況でも、心は負けずに前を向く――そこから新たな希望が生まれることを、復興に向け、被災された方々と一緒に行動する中で教わる毎日です。

今も脈打つ師匠の心

私は13年前、東日本大震災の被災地支援のため東北に滞在し、津波による甚大な被害を受けた地域で、復興に向けた懸命の作業のお手伝いをさせていただきました。その中で、被災した創価学会の同志の方々が抱きしめていた言葉がありました。

「『心の財』だけは絶対に壊されません」

発災から数日後、池田大作先生が創価学会の機関紙である聖教新聞を通して被災地へ送ったメッセージです。さらにその末尾には、被災者への深い心が込められた言葉が記されていました。

「断じて負けるな! 勇気を持て! 希望を持て!」

この池田先生の言葉を胸に、苦難を乗り越えてこられた東北の同志の方々から、能登半島地震の被災地に数多くの励ましのメッセージをいただきました。
私たちもまた、この先生の言葉を抱き締め、復興の歩みを開始しています。

能登の創価学会員が心に刻む一つの和歌があります。1992年3月11日、池田先生が能登の会員たちに贈ったものです。

「能登の友
  断固まけるな
   三世まで
 長者と賢者の
    誇りわすれず」

和歌にある「断固負けるな」との言葉は、今を生きる私たちへの励ましに思えてなりません。

発災以来、多くの創価学会員の姿と言葉に触れ、どんな環境でも希望を抱きしめ進んでいく「心の財」がいかに重要であるかを、日々確信を深める思いです。

石川の未来を開く青年世代の一人として、苦難に直面する人々と共に歩み、石川の復興を必ず成し遂げることを、強く決意しています。

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