不安を吹き飛ばす真心 2022年3月度座談会拝読御書「妙一尼御前御消息(冬は必ず春となるの事)」

創価学会では、毎月、全国各地で座談会という集いを開き、鎌倉時代の日蓮大聖人(1222年~1282年)が書き残された「御書」(論文や手紙など)を学び合います。機関誌の「大白蓮華」や「聖教新聞」には、その月に学ぶ「座談会拝読御書」を解説する記事が掲載されていますので、ここでは、信仰を持っていない方々にも理解しやすい視点から、青年部員が御書の内容を解説します。

3月担当のレンタローです!

厳しい寒さが続きますが、体調、崩されていませんか? あと少し待てば、あったかい春が訪れます(待ち遠しい…)。

そう、私たちが冬の寒さに耐えられるのは、「冬の次には春が来る」って知ってるからですよね。もし冬の次に春が来ることを知らなければ、どうなるでしょうか…?

よく苦境に立たされることを「冬の時代」と表現します。季節の冬は春になることが分かりますが、生活や社会の「冬の時代」となると、この先に春が来るのか、不安になります。たとえば、同僚や友達、家族との人間関係、仕事の悩み、病気やケガなどに直面した時、いつ乗り越えられるのか、本当に乗り越えられるのか心配ですよね。

今回の御書は、先の見えない苦境にある人を励ます日蓮大聖人の真心がつまった「妙一尼御前御消息(冬は必ず春となるの事)」です。

拝読御書について

「妙一尼御前御消息(冬は必ず春となるの事)」は、1275年(建治元年)5月、日蓮大聖人が54歳の時に、身延(山梨県)で記され、鎌倉に住む妙一尼に送られたお手紙です。

この4年前(1271年)、日蓮大聖人は竜の口の法難の後、佐渡島へ流罪されます(注1)。時を同じくして、大聖人だけでなく、その弟子たちにも弾圧(逮捕、追放など)の手が及びます。

(注1)竜の口の法難と佐渡流罪
竜の口の法難は、1271年(文永8年)9月12日の深夜、日蓮大聖人が斬首の危機に遭われたこと。幕府の軍勢が大聖人を捕縛し、竜の口の付近で斬首を試みるも、突如、光り物が出現したとされ、処刑の試みは失敗した。
その後、大聖人は不当に佐渡へ流刑された(佐渡流罪)。約2年5カ月に及ぶ佐渡滞在中は、衣食住も満足ではなく、敵対する念仏者らにも命を狙われるという過酷な環境に置かれた。

妙一尼は夫とともに信仰を貫いていました。しかし、夫は所領没収の難に遭い、やがて亡くなってしまいます。遺された妙一尼は、幼い病気の子らを抱えていました。このように苦しい状況が続く中でも、妙一尼は純粋な信仰をまっとうしました。

冬が秋に戻ることはない

本文

法華経を信ずる人は冬のごとし。冬は必ず春となる。いまだ昔よりきかずみず、冬の秋とかえれることを。いまだきかず、法華経を信ずる人の凡夫となることを。

(御書新版1696ページ1行目~・御書全集1253ページ16行目~)

意味

法華経を信じる人は冬のようなものである。冬は必ず春となる。昔から今まで、聞いたことも見たこともない。冬が秋に戻るということを。(同じように)今まで聞いたことがない。法華経を信じる人が仏になれず、凡夫のままでいることを。

語句の説明

・「凡夫」
普通の人間。煩悩・業・苦に束縛され、迷いの世界で生死を繰り返す者。

冬の後には必ず春が来ます。冬が秋に戻ってしまうということは、ありえません。それと同じく確実に、『法華経』を信じる人は仏になることができ、迷いを繰り返す凡夫のままでいることはないとの仰せです。

この御文は、直接は、妙一尼の亡くなった夫が必ず成仏していることを語られた内容です。しかし、まさに真冬のような苦難に直面していた妙一尼を励ます一節でもあったのではないでしょうか。現在の苦難が乗り越えられるのかどうかも分からない妙一尼に、「冬は必ず春となる」という明らかな道理を通して、信仰を貫けば必ず苦境を乗り越えられることを確信させようとされたのだと思います。

創価学会では、草創期から多くの会員が、この一節を大切にして、人生の苦難に立ち向かってきました。この信仰によって、厳しい冬を乗り越え、うららかな春を迎えることができたという体験を持っています。その確信があれば、次も、困難に迷いなく立ち向かっていけます。

また、仏になるというのは、「仏の覚りの境涯を開く」ということです。私たちは南無妙法蓮華経と唱えることによって、何があっても負けない仏の境涯を引き出せます。

不安にさいなまれた迷いの境涯ではなく、必ず、困難を乗り越える覚りの境涯に到達できる――。お手紙に込められた真心のメッセージは、門下の不安を吹き飛ばしたのではないでしょうか。

みんなが仏になれると説く『法華経』

本文

経文には「もし法を聞くことあらば、一りとして成仏せざることなけん」ととかれて候。

(御書新版1696ページ2行目~、御書全集1253ページ17行目)

意味

経文には「もし法を聞くことがあれば、一人として成仏しない人はいない」(『法華経』方便品)と説かれている。

語句の説明

・「成仏」
仏法の信仰の根本的な目的。『法華経』では、万人に仏界がそなわっていることを明かしており、この仏界を開き現すことで、この身のままで直ちに成仏できることが説かれている。

ここでは『法華経』を引用して、『法華経』によって成仏しない人はいないと仰せです。「冬は必ず春となる」という道理だけでなく、経典によって裏付けることで、さらに確信を与えられたのだと思います。

『法華経』は、みんなが仏になれること(万人成仏)を説いた教えです。見方を変えれば、成仏を確信するとは、自分の可能性をあきらめずに信じ抜くことですよね。その境涯に立てば、困難に立ち向かう勇気がわきます。日蓮大聖人の仏法は、絶対にあきらめない勇気を引き出すんです。

ある海外の創価学会員からお話を聞いた際、苦難に直面した時に先輩から「厳しい冬の時期から、すでに春への準備は始まっているのよ」と励まされたと語っていました。人生においては、「冬」こそ成長のチャンスと言えるのではないでしょうか。

また、仏法では、善い行いが功徳(注2)となって積まれるものを「善根」と呼びます。冬の時期に見えないところで育った根っこが、春には芽を出し、花を咲かせるというイメージが浮かびますね!

(注2)功徳
すばらしい性質、特に人々に利益を与えるすばらしい性質のこと。また功徳を生む因となる善行をいう場合がある。

池田先生は、こう記されています。

「仏の眼から見れば、誰人にも幸福になる権利がある。誰もが、歓喜踊躍の人生を送ることができる。いわんや胸中の妙法を涌現する方途を知っているのが、日蓮仏法を持った私たちです。ゆえに私たちには、幸福になる権利があるだけでなく、真の幸福を万人に開いていく大いなる使命もあるのです」(『希望の経典「御書」に学ぶ』第2巻)

自分の可能性を信じられる人は、みんなの可能性も信じられる人だと思います。確信と真心をもって、一緒に春へ進んでいきましょう!

御書のページ数は、創価学会発行の『日蓮大聖人御書全集 新版』(御書新版)、『日蓮大聖人御書全集』(御書全集)のものです。

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