ブレない信念のすすめ
「あなたは何を信じて生きていますか」
「どんな信念を持っていますか」
こう質問されたら、皆さんならどのように答えるでしょうか。
「信念」という言葉には、「かたく信じて疑わない心」などの意味があります(『精選版日本国語大辞典』)。
以前、元陸上競技選手の為末大さんが、陸上競技における自身の気づきを通して、「“帰ってくるところ”が分かっているから、遠くへ行きやすくなる」(2025年1月26日付「聖教新聞」電子版)と語っていたのが印象的でした。
これは走り方の型がしっかり身についていればアレンジを通してさらに進化できる、という意味での言葉でしたが、人生にも通じると思います。
“帰ってくるところ”、つまり確かな信念があるからこそ、多くの人の意見や思いに触れ、共感しようとするし、より広く深い視点を持つことができるのではないでしょうか。
後述するように、私自身、以前は自分の“帰ってくるところ”がなくてフラフラしていました。しかし、自分の確固たる信念を築けたからこそ、多様な意見や考えを謙虚に学び、価値判断ができるようになったと感じます。
目まぐるしい速さであらゆることが変化し、無数の考えや価値観に触れられるようになった現代社会。であるからこそ、「ブレない信念」を持つこと自体に大きな価値があると思います。
何かを信じて生きている
その上で、「何を信じて生きるか」ということも、とても大事なことだとも思うんです。
池田大作先生の言葉に次のようなものがあります。
「信」は人間の生の基本的条件であり、人間は「信ずるか」「信じないか」を選択することはできない。選択できるのは「何を信ずるか」ということだけなのです。(『法華経の智慧』普及版〈上〉)
たとえ自分が無宗教、あるいは哲学や思想を持っていないと思っている人でも、「ブレない信念」ほどではなくても何かを信じて生きているということです。
食べ物だって、安全なもの(毒が入っていない)と信じるから食べられる。電車だって、大きな事故が起きないと信じるから乗れる。
自分の運命は最初からすべて決まっていると信じていれば、どんなに努力をしても無駄であると思ってしまいます。苦労することは損であると信じていれば、生きる上で避けられない様々な苦労を、苦痛にしか感じません。
生きていく上で大切なことなのに、ほとんどの人は、「自分は何を信じようか」「どういった信念を持とうか」と悩んだり、探したりすることは少ないのではないでしょうか。
先ほど紹介した池田先生の言葉には続きがあります。
「何を信じ、何を信ずべきでないか」を体系化したのが宗教であり、その意味で宗教は、万人の人生・日常と密接にかかわっているのです。(同)
良くも悪くも人生を左右
良い方向にも悪い方向にも作用する信念。
その信念の働きを突き詰めて考えてきたのが信仰なのだと思います。
私は、幼い時は明るい性格だったのですが、思春期を迎えた頃は自分に自信がなく、周りの友達の顔色を伺ったり、空気を読んだりしてしまうことが多かったと思います。だから、何に対しても「自分の意見」がありませんでした。それは、自信をもって信じているものがなかったからだと思います。
自分の信念が少しずつ築かれ始めたのは大学時代からでした。
当時、私の周りには人生について真剣に考える友人がいて、私も「幸福とは何か」「親孝行とは何か」など様々なことを考え、深めるようになりました。
そうしたことへの答えを求めて仏法の生命哲学を学び、時には疑問を抱きながらも、納得と共感を重ねながら、人生観を磨くことができました。また、創価学会で共に活動する仲間たちへの励ましや友人との真剣な対話は、多様な価値観を学びつつ、自身の信心をさらに深める契機にもなりました。
日蓮仏法の信仰を実践して変化したことはたくさんあります。
例えば「変毒為薬」――人生で不運に思えるようなことに遭遇した時、起きた出来事のプラスの側面を見つけ、幸福になっていくための価値に転換する強い生き方が少しずつできるようになったこと。
また、「利他の精神」――日蓮大聖人の「人のために火をともせば、我がまえあきらかなるがごとし」(御書新版2156ページ・御書全集1598ページ)との言葉を知り、人のための行動は全て自分のためにもなっていると学ぶ中で、謙虚さや相手への感謝の心が持てるようになったこと。
こうした変化がそのまま自身の信念となり、私の人生にとってかけがえのない“帰ってくるところ”となっています。
信仰を通して私が学んだことは、突き詰めて言えば、「何を信じるかで人生は大きく変わる」ことだと思っています。
玉石混交の情報があふれ返る今という時代に、信念を持って生きることがどれだけ大事か。そして、強さや謙虚さをもてる素晴らしい信念を持って生きられることがどれだけ幸せか。
そのことを、これからも多くの縁する人と語りあっていきたいと思っています。
御書のページ数は、創価学会発行の『日蓮大聖人御書全集 新版』(御書新版)、『日蓮大聖人御書全集』(御書全集)のものです。
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