「陰謀論」と向き合う、たった一つの護身術

新年早々、こんな話ですみませんが…
2022年も終わろうとしていた12月末、東京地裁で一つの判決が下されました。コロナワクチンの「陰謀論」を主張する団体のメンバーらに対し、ワクチン接種会場への建造物侵入で有罪が宣告された判決です。

CIAがどうとかいう“陰謀論”もある

2021年1月、アメリカで大統領選挙の不正を訴える人たちが議会を襲撃し、5人の死者を出しました。
首謀したのは、「Qアノン」という、陰謀論を深く信じた人たち。
世界は「ディープ・ステート(影の国家)に牛耳られている」(毎日新聞取材班著『オシント新時代 ルポ・情報戦争』、毎日新聞出版)という主張です。
冒頭で紹介した団体は、この「Qアノン」の派生団体とされています。

そういえば陰謀論って、コロナ禍が始まった直後もいろいろありましたね。「ワクチン接種で体に磁石がくっつくようになる」といった話とか……。

鎌倉時代の日蓮大聖人は、デマに対して「いずれの月、いずれの日、いずれの夜の、いずれの時に」(日蓮大聖人御書全集新版248ページ)と(つまり「明確な証拠を出してみよ」と)鋭く問いただしました。
根拠不明という点では、現代のデマも800年前とまったく変わっていないということでしょうか。

ちなみに、多様な陰謀論の中には「CIAアノン」などもあるそうで。
もちろん大多数の国民は、荒唐無稽な主張を掲げる(そして時に、特定の他者を一方的に攻撃する)集団に対して「イタいな」「近づきたくないな」としか思わないでしょうが、そんな集団の指導者が、少数ながら熱狂的な“信者”を得ているケースも見られます。

陰謀論を広げる人の、金銭・政治・売名目的

「人はなぜ陰謀論を信じるのか」については、ここでは割愛します。
むしろ気になるのは、大ウソや陰謀論を「全力で広げる人」の動機。さまざまな研究によれば、大きく三つほど観点があるようです。

●1、金銭目的

「陰謀論者の中には、いわばビジネスとして、陰謀論を自らの主張として展開している者もいる」
「『信念』ではなく純粋な『金銭目的』が、フェイクニュースと陰謀論の概念的な違いを超えて、広く『事実とは異なる情報』を発信する動機になりうる」(秦正樹著『陰謀論』、中公新書)

●2、政治目的

「政治家が、自らの政治的立場や政策の正当性や優位性を主張するために、陰謀論を主張する現象も見られる」(同)。

確かに、多くの人が白眼視するようなとんでもないデマや主張でも、一定数の支持者さえ得られれば、地方選などでは議席も視野に入ってきます。

●3、承認欲求

「何でもいいから陰謀論を作れば、インフルエンサーになれる。Qアノン現象はそこから始まったのだと思います」(『オシント新時代』)。

多くの人を自分が動かしてみたい、注目してもらえる存在になりたい――そんなところでしょうか。

2や3は「売名目的」にも直結しそうです。明確な根拠を欠く大ウソ、荒唐無稽な内容の主張でも、一定数の便乗者を得て「祭り」になれば名が売れるので、当人にとっては話の真実性や現実性は、結局はどうでもいいわけですね。

怪しげな主張を叫ぶ集団の“カルト性”

でもこれ、そうした扇動に便乗する、あるいは乗せられる(≒結局は利用される)ことには、大きなリスクがあるように思います。

その「祭り」には、参加者同士で感情を共有できそうな一種の連帯感や、非日常的の行動に身を投じる高揚感もあるでしょう。その時は愉快かもしれません。でも、そういう熱狂状態を遠巻きに見ている大多数の人たちは、どう感じているでしょうか。

「少なくとも、この種の(※注・Qアノンのような)『ザ・陰謀論』を展開する友人・知人がいたら、多くの人は『頭を冷やせ』と諫めるか無視するかであって、それに同調する人は少ないだろう」(『陰謀論』)。

ですよね。

さらに、根拠があいまいなデマや(しばしば攻撃的な)主張は、一方的な「人権侵害」とも地続きです。軽い気持ちで「祭り」に便乗した結果、知らぬ間に人権侵害や違法行為に加担させられていた――そんなシャレにならないリスクをはらむ扇動、自分なら、便乗したことを後悔すると思います。

「政治的な透明性と説明責任は、陰謀論による度を越えた影響を緩和することはできても、陰謀論をなくすことはできない。われわれはまた、陰謀や陰謀論に与することのない政治家を選ぶ必要がある」(ジョセフ・E・ユージンスキ著・北村京子訳『陰謀論入門』、作品社)

こうした人に利用されない。
こうした人を選ばない。
これが私たちにできる、たった一つの護身術なのかもしれません。

「『功徳』とは、『六根清浄』の果報なり」(日蓮大聖人御書全集新版1062ページ)。

私も仏法者として、人や物事を見つめる眼を磨いていきたいと思います。


余談ですが、
創価学会を一方的にカルトと呼び、怪しげな話やデマを吹聴して創価学会の“撲滅”を叫んでいる“指導者”や集団も存在するようです。カルトの意味って何でしたっけ?

「カルト」とは「カリスマ的指導者を中心とする小規模で熱狂的な信者の集まり」(知恵蔵)

「ある人、事物に対する熱狂的崇拝。また、そのような人々の集団」(精選版 日本国語大辞典)などの意味。

あれ?
「カルト撲滅ッ!!」「創価学会は解散ッ!!」とか、カリスマ的指導者を中心に熱狂的に叫んでいる小規模の集団こそ、まさに「それ」なのでは……。

世間はよく見ています。
遠巻きに。

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