共に歩む復興への道

「希望の絆」コンサートの再開

昨年(2022年)の12月10日、11日の両日、福島県郡山市にて、音楽隊の「希望の絆」コンサートを開催しました。

このコンサートは、創価学会青年部が掲げる「SOKAグローバルアクション2030」そして東北「心の福光プロジェクト」の一環として行っている、“心の復興”のための演奏会です。

2014年の初開催以来、継続して東北・宮城、福島、岩手の各地をはじめ、熊本地震(2016年)や西日本豪雨(2018年)の被災地を訪問してきました。

コロナ禍となった2020年2月以降は開催を見送ってきましたが、コロナ禍でもできるコンサートを開催しようと、感染防止対策を講じながら2022年は4月の岩手を皮切りに、9月には宮城で開催。そして12月には福島でコンサートを行い、公演回数は180回を数えました。

2022年12月 福島県 郡山ユラックス熱海

震災直後の音楽隊の挑戦

「希望の絆」コンサートと題して、復興支援コンサートを始めたのは震災から3年後。

しかし、創価学会音楽隊は、震災発生直後から動きだしています。現在に至るまでを、少し振り返ってみたいと思います。

2011年4月3日。
余震も続き各地でまだ先行きが見えない状況下の中、音楽を通して少しでも被災者の方の希望になればと、自らも被災したメンバーもいる東北音楽隊の代表が、宮城県石巻市の避難所である万石浦(まんごくうら)中学校を訪れ演奏会を開催。

震災から約3週間、音楽隊として初めて復興のための演奏会を開催しました。

当時参加をしたメンバーは、次のように語っています。
「仙台から石巻に向かう道中、こういった時だからこそ音楽の力が必要なのではないかと思う一方、『音楽なんか聴いている場合じゃない』と叱責を受けるのではと不安もよぎり、半信半疑のまま会場に到着しました。しかし、不安とは裏腹に暖かくむかえてくださり、演奏後もしばらく拍手がなりやまず、今こそ音楽の力は必要なのだと確信しました。

聴いてくださった方からは「もう一度頑張ろうと思えた」「久しぶりに朗らかな気持ちになれました」等のお声をいただきました。音楽の力を実感し、音楽隊の使命を強く自覚したできごとになりました。

その後も、4月には岩手音楽隊が大槌町で演奏会を。宮城音楽隊は気仙沼の中学校、また、市の体育館でも行うなどしました。

5月、原発の影響で福島県双葉町で被災をされていた方々が、埼玉県加須市に避難をされていました。そこで、首都圏の音楽隊である「しなの合唱団」が被災者の皆様をご招待し、市内にて交流コンサートを。また、マーチングバンドの「創価ルネサンスバンガード」も市内の体育館にて演奏をさせていただきました。

演奏会だけでなく、演奏したCDやDVDを作成し、被災地に届けてきました。最も早く届けたのは、阪神淡路大震災を経験した関西音楽隊でした。震災から4日後には、みなで集まり録音、CD100枚を作成。同じ困難を経験した関西音楽隊はいてもたってもいられず、少しでも心の安らぎになればと録音し被災地に送りました。その後も、各地の音楽隊が自分たちにできる復興支援を続けてきました。

180公演を行った8年間

2014年、被災地の方から少し落ち着いて音楽に耳をかたむけられるようになってきた、という声が届くようになってきた頃、青年部の平和活動の取り組みとして「SOKAグローバルアクション」(当時)を開始。

その柱の一つに、音楽隊による心の復興のための演奏会を東北被災地にて開催することになり、名称は「希望の絆」コンサートとしました。コンクール全国大会で金賞を獲得していた首都圏の「しなの合唱団」「創価グロリア吹奏楽団」「創価ルネサンスバンガード」の3団体を被災地に派遣することに。

「希望の絆」コンサートを開始した2014年は、特に被害の大きかった沿岸部を中心に33公演開催。

2015年以降は、「関西吹奏楽団」も派遣を開始し、沿岸部から避難をされている内陸部も視野に入れ、被災地域を広く訪問し開催をしてきました。

2017年2月 宮城県 多賀城市文化センター

その後、東北だけでなく2018年には熊本地震、北海道胆振東部地震の復興支援活動として、2019年には西日本豪雨の被災地にて開催するなど、これまでに78市区町村、公演回数は180を数え、のべ75,000人の方にご参加いただきました。中には、2度、3度と訪れた地域もあり、復興の証しである地域の文化ホールの「こけら落とし」としても開催。また商店街のオープンを記念して、招聘されておこなった演奏会もあります。

2018年1月 福島県 いわき芸術文化交流館アリオス

音楽隊の今後の活動

先日、このコンサートに参加してくださった、「福の島プロジェクト」の小林文紀会長は次のように述べてくださいました。
一過性のものではなく、継続した取り組みが被災地の復興に不可欠であると実感しています。だからこそ、2014年から180回ものコンサートを行ってきた音楽隊に期待したい。子供たちをはじめ、多くの人に勇気を届けていってください。
(聖教新聞 2022年12月14付)

震災から本年で12年。ハード面の整備は整いつつありますが、心の復興はまだまだ途上であると東北のある方が話してくださいました。
また、被災者にとってつらいのは時間とともに「忘れられてしまうこと」であるとも。

音楽隊を創設してくださった創価学会の池田大作先生は、

「音楽芸術は、苦闘する人を励ます生命の炎である。
心は心でしか、温めることはできない。なかんずく、真摯に向上しゆく青年の楽音は、絶望の闇に震える友を蘇らせる光となり、熱となる。」
(出典:「音楽隊ありて創価の凱歌あり」より 聖教新聞 2015年5月11日付)

と、私たち音楽隊に指針を与えてくださっています。

音楽隊はこれからもこの指針を胸に、音楽の力を信じ、被災者の皆様の心に寄り添い復興への道を共に歩み続けていく決意です。

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#文化 #震災 #復興 #音楽