引きこもりのメンバーとの関わりで学んだこと

「あなたとは二度と会いたくないです」――LINEで送られてきた一文に、私は、 “なぜなんだ?”と自問自答するしかありませんでした。

私が男子部のリーダーとして活動を始め、半年くらい経った頃に出会ったあるメンバー。彼は、かつて人間関係のもつれから不登校になり、引きこもりになりました。

私は、そんな彼のもとに足しげく通い、話に耳を傾け、一歩ずつ関係を深めていきました。そんな中で、彼は、会合参加できるようになり、さらに、生まれて初めて家族以外の人と県外へ外出できるようになるなど、引きこもりの状況も変化していきました。“いよいよこれから”――そう思っていたある日、冒頭の言葉を目にすることになったのです。

自問自答したのと同時に、早稲田大学文学学術院教授の石田光規氏による「孤独・孤立問題」の話を思い起こしました。

石田氏は、「問題のない孤立」「介入すべき孤立」という、孤立の状態には種類があることを踏まえた上で、孤独感や孤立感が高まると自己肯定感が低くなることを指摘。「『誰も自分には注目してくれない、自分を気にかけてくれる人はいない』と感じ、最終的には、『自分は駄目な人間だ、存在価値がないのだ』と自己肯定感が切り下げられる」(「現代社会における孤立問題 ―地域社会は再生するのか―」)と述べています。そして、この孤独・孤立問題への対応として有効な一つの手段として、アウトリーチ(外からの接触)を挙げています。

私自身、学会の訪問・激励は、「人のつながり」を作るアウトリーチ(外からの接触)活動としてメンバーの孤立を防ぐとともに、SDGsが掲げる「一人も取り残さない社会」の実現への一助にもなる、社会的にも意義がある活動であると思って、力を入れてきました。

冒頭の言葉で自問自答していた私は、“そうした意義ある活動をやり通せるのか、今こそ試されているのかもしれない”と、メンバーに、どう向き合うべきかを祈り、考えました。まずは、すぐに返事をするかどうか。というのも、どんな言葉をかけても、感情を逆なでしてしまうだけの場合もあるからです。男子部の先輩に相談の上、あえて、すぐには返事をせず、彼の幸福を一段と強く深く祈るようにしました。

LINEが送られてきてから3カ月後。突然、彼から連絡があり、久々に再会できることになりました。彼は、自分より人生がうまくいっている人の話を聞くだけで、嫌な気持ちになること、典型的なうつ症状で気持ちが沈んでいたことを打ち明けてくれました。どうしたらつながることができるかと祈り続けていた私は、全てを受け止めて、「今の君のままでいいから、気が向いたときにでも参加してくれたらうれしい」と伝えました。それ以来、再び会合に参加してくれるようになったのです。

そしてその後、徐々に心身の体調を回復していった彼は、就職を果たすことができました。その過程を振り返り、「学会活動をやり始めたことで、立ち直るのが早くなった」とまで語ってくれています。

一度は断絶したように思えた人間関係。それでも、相手の幸福を祈り続ける中で、修復・発展させることができた体験です。もちろん、つながりのあり方は相手や状況によってさまざまですが、私にとって、目の前の一人の幸福を祈り抜く大切さを実感するとともに、学会の訪問・激励の社会的な意義を、身をもって知った機会となりました。

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