“AI×宗教” ▶ AI時代と宗教の価値〈上〉

わたしは趣味の範囲だが、最新の家電やITテック、デバイスなどがわりと好きな方だ。そして最近の注目はもっぱら「生成AI」である。

そこで今回は “AI×宗教” というテーマで少し考えてみたいと思う。

“AI時代”への本格的な突入

2022年、生成AIへの注目度が一気に高まった。多くの人が文字生成AIの「ChatGPT」や、画像生成AIの「Stable Diffusion」という名を聞いたことがあるだろう。

驚くのはその生成物の完成度だ。実際、画像生成AIで作成された画像が、写真や絵画のコンテスト・品評会で優勝し、物議を醸すという事態が起きた。またChatGPTは2023年の医師国家試験の合格ラインを超え、2024年1月には、芥川賞を受賞した作家が、作品の5%前後で生成AIの文章をそのまま使用していると述べた。

また特筆すべきは「AIの民主化」という点だ。今まではちょっと遠い存在だったAIだが、これらの生成AIは自然言語(日常で話したり書いたりする自然な言語)で処理ができ、誰でも簡単に利用することができる。

2023年には文字・画像以外にも、動画や音声、プログラムコード、データ分析などあらゆる生成AIがリリースされ、まさに「生成AIのカンブリア爆発期」と呼ばれる年となった。

日本においても生成AIを導入し、業務に活用している企業や自治体が増えてきている。

AIがスマホくらい当たり前に

18世紀後半の産業革命によって経済の中心が農業から工業へと大きく変わり、機械と内燃機関の誕生で生産性が飛躍的に高まった。

近年ではインターネットの登場によりコミュニケーション手段が増え、また情報へのアクセスが劇的に向上した。そしてスマートフォンが生まれ、一人一台、高性能なコンピュータを持ち運ぶ時代となった。

政府が行っている「AI戦略会議」において、生成AIはこれらの「産業革命やインターネット革命よりずっと大きなものになる」(※1)と分析をしている。

今や若い世代にはスマホ無しの生活が考えられないように、近い将来、誰もが生成AIを活用しながら仕事や日常生活を送るのが当たり前の時代になっていくだろう。

とは言え、生成AIはまだ発展途上であり、使用上の課題やリスクもある。

文字生成AIではその仕組み上、誤った情報をあたかも正しいように提示し、幻覚(ハルシネーション)を起こすことがある。

また個人情報の漏洩リスクや、著作権侵害などの権利問題もある。AIに関する具体的な法整備はこれからのため、AI生成物を利用する際には細心の注意が必要だ。

宗教界にも生成AIが!?

実は宗教界にもすでに生成AIが入ってきている。

2023年6月、ドイツの教会にて、AIアバター牧師による説教が実験的に行なわれた。これはChatGPTで作成された言葉を使用し、300人超の参列者を前に40分間の説教をするというものだった。(※2)

また京都大学と株式会社テラバースの研究開発グループは、仏教の経典などを学習させ、ユーザーの悩みに答えるチャットボット「ブッダボット」、「親鸞ボット」、「菩薩ボット」を開発したと発表した。(※3)

またイスラム教では、聖職者のアシスタントとして生成AIを活用できるのではないかと研究が進められているそうだ。(※4)

これらは試験段階であり、何かを結論付けるものではないが、「AIが人間に対し説法する」と聞くと賛否両論あるだろう。世代や文化、宗教によっても捉え方が異なるかもしれない。

ただ、この大きな時代の変化の流れにあって、宗教を含めたあらゆるところにAIが導入されていくことは避けられない事実なのかもしれない。

「内面を磨く」という宗教の役割

池田先生は小説『新・人間革命』の中で、「宗教の役割」について以下のように記されている。

政治も、経済も、科学も、本来、すべてが人間の幸福を追求するものですが、それらは制度や環境的側面など、人間の外側からの幸福の追求です。それに対して、宗教は、人間の内面世界からの幸福の追求に光を当てています。人間の内面の確立と、外側からの追求のうえに、人間の幸福はあるといえます。
あらゆる学問も、機構・制度も、それを生み出し、つくり上げてきたのは人間です。したがって、社会や環境の改革も、その主体者である人間の内面を改革することが肝要です。そこに高等宗教、なかんずく仏法の役割があると、私は考えております。(第29巻「常楽」の章)

科学技術を生み出しているのも人間であり、使うのも人間だ。人間の内面によって使われ方も変われば、創られていく社会や環境も変わる。その人間の内面を磨き、輝かせていくのが宗教の役割だ。

引き続き〈下〉で、今後の「AI時代」と、宗教の価値について考えてみたい。


※1 AI戦略会議 「AI に関する暫定的な論点整理(2023年5月26日)」

※2 Ledge.ai 「ChatGPT製『AI牧師』による実験的礼拝がドイツで開催」

※3 京都大学 「仏教対話 AI の多様化に成功」

※4 JBpress 「生成AIに目を向ける宗教指導者、イランでは聖職者のアシスタントにする動きも」

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