未来アクションフェスを終えて

3月24日に東京・国立競技場で開催された未来アクションフェスに、創価学会青年部は「SGIユース」として参画した。

学会青年部は、長年、池田大作先生のリーダーシップのもと、核兵器や気候変動といった地球的問題群の解決に向けて、意識啓発の運動に取り組んできた。これまでは独自で運動を行うことがほとんどだったが、今回のフェスでは、これらの問題解決に取り組む若者団体・市民団体と協働し、実行委員会の一団体に加わった。

学会青年部として、学会青年部の主催ではない、大規模行事を支えていく--。前例のない挑戦だったが、会内外の多くの方々に支えられ、成功裡に終えることができた。これを一過性のイベントにするのではなく、池田先生の平和構想を実現するための、新たな運動の起点にしていかねばならないと強く決意している。

「核兵器廃絶」と「気候危機の打開」。未来アクションフェスで掲げた二つのテーマは、どちらも、人類の存続を脅かす課題である。それぞれのテーマに取り組む団体は国内外に多くあるが、両方のテーマに橋を架ける取り組みは限られていると感じていた。

その点、今回のフェスでは、核廃絶や気候危機に取り組む団体が、実行委員会として一堂に会した。週に1回程度集まり、フェスの成功のために議論を重ね、汗を流す。これだけでも、学会青年部にとっては初めての試みであり、学びと気付きの連続だった。

言うまでもなく、団体ごとに、普段の活動形態や問題へのアプローチ、組織規模も異なる。だが、そうした差異を超えて、「今、ここから行動を起こすこと」が問題解決への一歩であると、皆で確認し合い、共に前へ進んでこられたことを、うれしく、誇りに思う。対話を通して友情を結び、共通目的のために手を取り合っていく。このプロセスそれ自体に、平和の実像があったのだと実感する。

フェスに向けた運動の一つである青年意識調査には、学会青年部としても積極的に取り組んだ。約12万人から回答を得た調査からは、若者が、気候変動に対して高い問題意識を持ち、核兵器は必要ないと考えていることが分かった。また、若者は、これらの問題に対処するための取り組みに、貢献したいと考えていた。

一方で、回答者の半数以上が、未来に希望を持つことが難しいと考え、8割が、国の政策に若者の声が十分に反映されていないと感じていることも分かった。また、国連に対しては、課題はあるものの、約8割の人が良い印象を持ち、今後も必要であると回答していた。
調査結果の詳細なリポートは、国連大学学長に手交した「共同声明」の全文とともに、未来アクションフェスの公式ページに掲載されている。

核兵器と気候変動という、多くの若者世代が“縁遠い”と捉えがちな問題を巡って、12万人の声を集められたことには、大きな社会的意義があると確信する。9月に国連で開催される「未来サミット」での議論に貢献できるよう、引き続き、結果を分析し、国連関係者や政策決定者に届けていくことを予定している。

未来アクションフェスが異例であり、同時に価値あるものであった要因の一つは、いくつもの“意外な(異質な)組み合わせ”によるものだろう。例えば、先述したように、核廃絶と気候変動は交わることの少なかったテーマであり、両方を射程に入れたフェス自体が、“意外”だったといえる。16の協力団体と12の後援団体をはじめ、普段は連携することがない個人・団体も一堂に会し、大きなネットワークが築かれた。

また、立ち向かう課題の深刻さとは、一見、対極にあるようなエンターテインメントを、ふんだんに取り入れたフェスであった。国連広報センターの根本かおる所長が、「社会課題とエンタメを掛け合わせたこれほど大規模なイベントは、日本では珍しい」とSNSで述べたように、「社会課題×エンタメ」という“意外性”は、多くの人が、核廃絶や気候変動を身近に感じる要因であったと確信する。

フェスに参加した高等部のあるメンバーは、“今回のイベントを通して、池田先生の平和提言を学び、先生が築かれた平和の連帯がいかにすごいかを身をもって感じました。将来、国連で平和構築のために働いていきたい”と感想を語ってくれた。

2030年の学会創立100周年、その先の2050年に、学会のみならず社会の中核を担う世代のメンバーが、“社会のために何かしたい”と感じられたことは、未来の希望の光である。

今回のイベントは、大手新聞各社や複数のテレビで報道され、特に青年意識調査の結果は、国内の貴重な調査報告として報じられた。
来賓で参加したある企業の会長からは、「課題解決へ、宗派や分野を超えて、あらゆる団体を繋ぎ、まとめる力は創価学会に期待する以外ない」との評価の声をいただいた。

社会のために何かしたいと思っていても、人数や経験値などが不足し、構想実現の回路を模索している団体は少なくない。フェスを機に、そうした人々や団体をつなぐ「場」をつくる、学会青年部の使命を改めて実感した。

一方で、交流を重ねた若者団体は、新しい視点や発想を持ち合わせている人たちばかりであった。こうした団体から学び続け、今後も協働していくことが、学会青年部をより強くし、ひいては、新たな信頼と共感を広げていく道であると確信する。

核兵器と気候危機をはじめ、地球的問題はいまだ山積みだ。しかし今回、国立競技場には6万人以上が集い、ライブ配信は50万人以上が視聴した。これだけの人が、問題を身近に捉え、行動への一歩を踏み出した意義は、決して小さくない。一人一人が、自分の周囲に行動の連帯を広げていけば、社会に大きなインパクトを生んでいけるはずである。
私たち創価学会青年部は、社会に尽くす仏法の使命を一層強く自覚し、一対一の対話を基調として、希望の連帯を広げていきたい。

青年部長 西方光雄

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