希望の未来をつくるには 2023年5月度座談会拝読御書「顕仏未来記」

創価学会では、毎月、全国各地で座談会という集いを開き、鎌倉時代の日蓮大聖人(1222年~1282年)が書き残された「御書」(論文や手紙など)を学び合います。機関誌の「大白蓮華」や「聖教新聞」には、その月に学ぶ「座談会拝読御書」を解説する記事が掲載されていますので、ここでは、信仰を持っていない方々にも理解しやすい視点から、青年部員が御書の内容を解説します。

こんにちは!5月度担当のひろかつです。

先日、大阪・関西万博の会場で起工式が行われたというニュースを目にしました。2025年に開催される万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。なにかと将来の予測が困難な時代ですが、どのような未来社会が描かれるのか、とても楽しみです。

先行きが不透明な状況は、日蓮大聖人が生きた鎌倉時代にも当てはまります。仏法の観点から見れば「末法」と呼ばれる、混乱した時代が始まったころ(「語句の説明」を参照)。そのことを象徴するかのように、地震や飢饉、さらには内乱に他国からの侵略などが起こっていました。

そんな混乱した社会状況にあって大聖人は、今回学ぶ御書「顕仏未来記」を執筆され、未来を展望されます。先行き不透明な時代に、どんな「未来記」(未来を予見して記した言葉)を記されたのでしょうか。

拝読御書について

「顕仏未来記」は1273年(文永10年)閏5月11日、日蓮大聖人が52歳の時に、流罪地の佐渡・一谷で著された御書です。

タイトルの「顕仏未来記」の意味は「未来を予見して、記した仏の言葉を実現する」です。大聖人が釈尊の未来記を証明していることを示すとともに、大聖人の仏法が世界に広がっていくという〝ご自身の未来記〟を記されます。

大聖人と門下に対し、激しい迫害が加えられていた当時、大聖人は佐渡へ流罪、門下たちも追放や所領没収に遭っています。大聖人はご自身の状況について、「今年、今月には、万が一にも死を免れないような身命である」(御書新版611ページ・御書全集509ページ、趣意)とつづられています。

先行き不透明な時代、さらに命がどうなるか分からない状況――。普通であれば、不安や目先の心配事で頭の中がいっぱいになるでしょう。それにも関わらず大聖人は、ご自身が弘められてきた仏法の未来を展望されます。

それが、今回の拝読範囲で示される「仏法西還」です。

「仏法東漸」から「仏法西還」へ

本文

月は西より出でて東を照らし、日は東より出でて西を照らす。仏法もまたもってかくのごとし。正像には西より東に向かい、末法には東より西に往く。

(御書新版610ページ5行目~6行目・御書全集508ページ2行目~4行目)

意味

月は西から出て東を照らし、日は東から出て西を照らす。仏法もまた、この通りである。正法ならびに像法時代には、仏法は西(インド)から東(日本)へ伝わり、末法においては、東から西へと流布していくのである。

語句の説明

・「月は西より出でて東を照らし」
月も太陽と同じく東から昇って西へ沈むが、当時、一般でも言われていた表現。一説には、月が一日の最初に見える位置が毎日、東に少しずつ寄って現れるからとされた。また一説には、三日月が日没後まもなく西の空低くに出て東方を照らすものの、すぐに沈んでしまうことを例えているともされている。
・「正像」「末法」
仏の滅後の時代を区分した正法・像法・末法のこと。
①正法とは、仏の教えが正しく行われる時代であり、教え(教)、実践(行)、結果(証)の三つがそなわる。②像法とは、仏の教えが形骸化する時代であり、教・行があって、証がない。③末法とは、仏の教えの功力が消滅する時代であり、教のみあって行・証がない。

インドから日本へ伝えられてきた仏法を「月」に、大聖人が打ち立てられた南無妙法蓮華経の教えを「太陽」に譬えられています。「月は西より出でて東を照らし」とありますが、これは当時、一般に言われていた表現です(「語句の説明」を参照)。仏法は、月氏の国と呼ばれる西方のインドから、東の中国、朝鮮半島、日本へ伝来してきました。これを「仏法東漸[とうぜん]」と表現します(「東漸」とは、だんだんと東へ移っていくという意味)。

一方、末法においては、大聖人が打ち立てられた南無妙法蓮華経の教えが、東の日本から西方へと還っていくと述べられています。「日は東より出でて西を照らす」とあるように、東天から昇って西を照らす太陽と同じ向きです。これが「仏法西還[せいかん]」です。

当時の地理的認識では、インド・中国・日本の三国が全世界を意味しています。ですので、仏法西還とは、日蓮大聖人の仏法が、仏法の祖国に帰っていくという意義にとどまらず、全世界へ広がっていくことをも指しています。

混迷する社会でも 前を見つめる

月に譬えられた仏法と、太陽に譬えられた仏法(南無妙法蓮華経)では、何が違うのでしょうか。

末法時代は、仏法の効力が消滅する時期とされ、その特徴として「白法隠没」(正しい教えが見失われる)とも表現されます。大聖人が御聖誕されたのは、末法の初めです(1052年に末法時代が到来したと考えられていました)。仏法の諸宗派が隆盛しているように見えても、自然災害や疫病などが深刻な時代状況は、まさに末法の様相と言えました。

大聖人は、釈尊が説いた諸経典の中でも、あらゆる衆生を成仏へ導く、最も優れた経典である『法華経』を宣揚されます。末法の人々を成仏へ導く教えとして、法華経の肝心である南無妙法蓮華経の教えを打ち立て、具体的には唱題行を確立し、南無妙法蓮華経を中心とする御本尊を書き顕されました。

仏法西還とは、万人の成仏を開く南無妙法蓮華経を、末法の日本だけでなく、世界へと広げることにより、全世界のあらゆる人々を救済していくことです。

末法には、暗く混迷したイメージがあります。しかし大聖人は、釈尊の未来記である『法華経』の文を挙げ、末法こそ真実の教えが広まる時であり、末法に生まれたことは喜びであるとつづられます。命を落としかねない佐渡流罪という状況にありながら、大聖人には、真実の教えへの確信と、それを実践する歓喜があり、あらゆる人々の幸福を願われていたのです。

先行きが不透明で、混乱した時代には、ともすれば、嘆き悲しんだり、怒ったり、無気力に陥ったりしてしまいます。しかし、それでも希望をもち、前を見つめて進んでいく。その前進のエネルギーとなるのが、日蓮大聖人の仏法なのです。

大聖人の未来記を創価学会が実現

仏法西還は、現実として、大聖人の時代に成就することはありませんでした。まさに「未来記」として、後世に託されたと言えます。

この未来記を現実に成し遂げたのが創価学会です。特に、第3代会長の池田大作先生のもと、インドなどアジアはもちろん、世界各国へ大聖人の仏法を弘めてきました。大聖人の時代から800年――。今では世界192カ国・地域に創価学会が広がり、南無妙法蓮華経の題目を唱え、実践しているのです。

池田先生は「(大聖人の)御予言の実現は、後世の人間の決意と大確信と必死の行動が根本となります。御予言とは、弟子の自覚としては、そう〝なる〟のではなく、そう〝する〟ことではないでしょうか」(小説『新・人間革命』第3巻)と、つづられています。

大阪・関西万博では、きっと想像を超える、驚くような未来社会が描かれるでしょう。その上で、どれほど素晴らしい理想の未来社会が描かれたとしても、それをただ待っているだけでは実現するのは困難です。

自身と社会の希望あふれる未来をつくるカギは、今を生きていく私たち一人一人の、前へ進みゆく意志と行動にあります。

御書のページ数は、創価学会発行の『日蓮大聖人御書全集 新版』(御書新版)、『日蓮大聖人御書全集』(御書全集)のものです。

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