自分も相手も大切に アサーションのすすめ
会社の終業時刻が近づく。「きょうは久しぶりに友達に会えるぞ」と荷物をまとめていたら、上司からこんな一言が。
「Aさん、会社を出ようとしているところ申し訳ない。明日の朝一でプロジェクトの会議をやることになって、申し訳ないけど、この後、資料をつくってもらえないかな」
(なんでこういう大事なタイミングの時に、、、しょうがない、友達には遅れるって伝えよう)
「わかりました、、大丈夫です」
皆さんはこのやり取りをどう思いますか。「共感する。私も我慢しちゃう」「無理です!の一択。予定あるんだから」ーーいろんな意見が聞こえてきそうです。上司も悪気があるわけではなさそうなので、なおさら”もやもや”しますよね。
そんな時に役立つ「アサーション」
近年、セクハラやパワハラなど、「ハラスメント」に対する意識が社会全体で高まっています。上記のやり取りに限らず、職場で円滑にコミュニケーションを取るにはどうしたらいいか悩んでいる人も多いはず。そこで注目されているのが、「アサーション(assertion)」という考え方です。
アサーションとは、「自分も相手も大切にする自己表現」という意味です。相手に敬意を払いつつ、「どれだけ自分の意見を表明できるか」に重きを置いています。
よく取り上げられるのが、「DESC法」と呼ばれる方法です。
Describe(状況を客観的に述べる)→Express(自分の気持ちを伝える)→Specify(具体的な行動を提案する)→Choose(選択する、代弁を述べる)
といった流れを意識し、意見を伝えるというものです。
冒頭のやり取りでAさんの側であれば、
「きょうは友人が遠くから来ていて会う予定があります(Describe)。
普段会えないので会いにいきたいのです(Express)。
急ぎだとは思うのですが、会議を明日の午後にしていただくことはできませんか(Specify)。
もしくは箇条書きの簡単な資料はつくるので追記いただけませんか(Choose)」
といった感じです。
ここ数年、SNS上での誹謗・中傷が問題視されています。相手の意見を論破し、自分の意見を一方的に押し付けるようなコミュニケーションが横行すれば、相手を傷つけるだけでなく、社会の分断につながりかねません。
その意味でも、自分も相手も尊重しながら表現する「アサーション」は、職場でのやりとりだけでなく、日頃のコミュニケーションにおいても役に立ちます。最近では、学校や医療の場でもアサーションを用いた自己表現のトレーニングが行われているそうです。
「自分も相手も大切」と言われても
ただ、アサーションが、「自分の主張をどう通すか」という表面上のノウハウに走ってしまっては意味がないでしょう。私が思うに、アサーションの本質は「自分と相手を尊重できる関係づくり」にあります。そこで大切なのが、「自分以外の相手(=他者)とどう向き合うか」という哲学ではないでしょうか。
創価学会が信奉する仏法では、人間にはかけがえのない使命(=仏性)があると説かれています。自分にしかない使命を見つけるため、私たちは日頃の信仰活動に力を入れています。
池田先生はつづられています。
「皆さん一人ひとりが、燦然たる最高の仏です。かけがえのない大使命の人です。人と比べるのではなく、自分を大事にし、ありのままの自分を磨いていけばいいんです。また、自分が仏であるように、周囲の人もかけがえのない仏です。だから、同志を最高に敬い、大事にするんです。」(『新・人間革命』「力走」の章)
そうした哲学に支えられているからか、創価学会の皆さんは「アサーションの達人」が多いように感じます。かくいう私も、多くの学会員の先輩方との出会いがあって今があります。勉学や進路で壁にぶつかった時、自分の思いを否定することなく聞き、自分事のように悩み、励ましてくれました。具体的なアドバイスをもらったことより、自分を思う“心”が伝わってきて、何より嬉しかったです。
似たような経験をした学会員の方は少なくないはず。「アサーションの精神」が根付いているコミュニティーってなかなかないのではと誇らしく思います。私自身も、女子学生部のメンバーや友達と接する際、自分の言葉が相手の心に寄り添うものになるよう意識しています。
友人から悩みを相談されたとき、アサーションを意識しながら自分の考えを伝えると、その友人は「心が軽くなった」と感謝してくれました。個人的にうれしかった出来事です。
まだまだ挑戦中ですが、「アサーションの達人」になれるよう、日頃のコミュニケーションを大切にしていきたいと思います。