子育て日記。妻はうつです。 精神疾患に向き合う家族が「HALT」を意識したらうまくいった話

6年ほど前、第2子出産後に妻が産後うつになり、夫・父として、妻のケア、家事・育児を試行錯誤でやってきました。

精神疾患の当事者はどうしても感情に波があります。そこを理解した上で周囲はサポートできるとよいでしょうーーと、関係するサイト情報や書籍に書いてあるし、医者もそう言うのですが、それって、支える側が健康で、心に余裕があることが前提の話なんですよね。実際は難しいなと感じることが多々あります。

なぜなら、支える側も、当事者の感情の渦に巻き込まれてしまいやすいからです。気付けば、心に余裕がなくなり、相手を追い込むような言動につながっている場合があります。結果、妻の体調は悪化し、寝込んでしまうことがありました。しかし、家事・育児は待ってくれません。自分もさらに追い込まれてしまい、家庭全体が機能不全に陥るという、負のスパイラルにはまってしまいます。

どうしたらいいんだろう。何とか自分の感情をコントロールできないものかと考えました。でも、不意を突かれたように怒りが爆発してしまう時がある。情けなくなりました。でも、唱題をしながら考えていると、反省する気持ちとともに、“怒ってからどうこうするのが難しいのなら、怒りが起きにくい環境づくりをしよう”という発想も浮かびました。

そこで参考になったのが、アルコールや薬物などの依存症の方々の実践や考えです。依存症の当事者グループでは、衝動的な依存行動を抑えるために「HALT」(ハルト)を意識しているそうです。

「Hungry(空腹)」「Angry(怒り)」「Lonely(孤独)」「Tired(疲れ)」の頭文字をとったものです。空腹、怒り、孤独、疲れの増大は、依存行動のトリガーになりやすいため、これらを意識的に回避していくことが大切になるんです。

HALTを意識したアクションは依存症当事者のためですが、関係書を読んでいて、直感的に“自分にも効果がありそうだ”と思いました。振り返ってみると、お恥ずかしい話ですが、お腹が空いている時に夫婦喧嘩をすることが多かったし、家事育児でヘトヘトになると、子どもの要望に応えられず、叱ってしまうことがありました。HALTを意識することで、自分の生活も改善できる部分があるのではないか。

とりあえず、夫婦で話し合いをするなら、「仕事から帰ってきてすぐ」や「寝る直前」ではなく、ご飯を食べてからにしてみました(笑)。睡眠時間の確保も疎かにせず、しっかり取るようにしました。

あとは、心の余裕を生むために、自分にごほうびをあげることも大切にしました。ともすると、当事者家族は相手のケアに徹するあまり、自分のことを後回しにしがちです。それ自体は尊いことでもあるのですが、長い道のりを考えれば、持続可能な視点を持つことも有益かと思います。ごほうびといっても、ものでなく時間でもなんでもいい。「自分だけ楽しんでいいのか」と感じる人もいるかもしれませんが、自分が整っていてこそ他者にも優しくできるのではないでしょうか。

「Lonely(孤独)」対応としては、わが家では、妻の提案・言葉に「NO」と言わず、まずはいったん「YES」で受けとめてみる、という取り組みをしています。主観で何でもかんでも即断せず、「なぜ相手はそういう言葉を発したのか」「今、どういう気持ちなのか」を想像するように努めた上で、落とし所を探る方が、理解してくれているという安心感が生まれやすいと思うんです。

といっても、ケアする側が限界を超えてしまっては元も子もありません。「ケアする人をケアする仕組み」をつくることも大事だと思います。友達でも専門家でもいいですが、何でも相談できる相手を見つけました。特に男性は、「弱音を吐くなんて男らしくない、恥だ」なんて考えやすいですが、そんな”男らしさ”は、いったん脇に置いておくことをおすすめします。

自分自身、まだまだモヤることはたくさんあるし、一喜一憂してるんですけど、以前より穏やかに過ごせるようになりました。と同時に、妻の回復も進んでいます。パートナーのケアに悩んでいる方は、試しに「HALT」を意識して行動してみてはいかがでしょうか。

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